#1 SWING BIN

SWING BIN

究極のミニマリズムを体現した、彫刻のように佇むフォルム
まるでオブジェのようなSWING BINは、
置かれた場所をより理想的に、美しい空間へ。

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MOHEIMの中で、SWING BINはアイコニックな存在だと思いますが、デザインのコンセプトはどういったものだったのでしょう?

「世界のデザインコンシャスな人々を魅了するような、今までに見たことのない美しいゴミ箱を作る」という想いが、SWING BINを生み出す最初の原動力となりました。

時代や場所に関わらず、生活の中で誰もが目にしてきたプリミティブな形状を、特別感のある製品に仕上げるため、ディテールにこだわって考えました。プロトタイプが仕上がったとき、そして量産がようやく決まったときは、「SWING BINの新たなフェーズがはじまるんだ」と感じました。

SWING BIN cordbord model image

商品名にも冠された“SWING”するフタですが、特徴は何でしょうか?

非常に単純な構造で、上部に載せただけのフタなのですが、スムーズに開閉しますし、簡単に取り外せます。

この開閉のメカニズムに必要なのは、斜めにカットされた円筒形の本体と、フタを引っ掛けるためのわずかな段差。そしてフタに施された切り込み、本当にそれだけなんです。フタの回りすぎによる落下を防ぐためのストッパーが内側についてはいますが、ネジやギア、ワイヤーなどは使っていません。これがこのゴミ箱の「機能」でもあり「デザイン」とも言えます。

はじめてフタの動きを動画で見たとき、とても不思議に思いました。フタをポンと押すとバランスを保ちながらゆるりと開く。そして、ほどなくして元の位置に戻ってパタンと閉じます。この動作が自体がとてもエレガントで、捨てるという行為が、ちょっと楽しみになるかもしれません。

フタは簡単にすっと持ち上げるだけで本体から外せます。そして、ポンと本体にのせるだけで元に戻る…。だから、中のゴミも捨てやすいというメリットも付随しました。

SWING BIN Lid swing image

SWING BINが注目を集めたのは、いつごろでしたか?

2009年にプロトタイプが完成し、2010年にミラノ・サローネにて展示しました。そこで注目が集まって、翌年に「最も影響力のあるライフスタイルマガジン」とも呼ばれたイギリスの『wallpaper*』のDESIGN AWARD 2011で賞を獲得。同年、『wallpaper*』創刊時の編集長だったタイラー・ブリュレ氏が立ち上げたことでも有名な『MONOCLE』誌でも“Design Directory 2010/11 Top 25 products”にも選ばれました。

デザインの美しさと機能性が評価されたと、非常に嬉しく思いましたね。そして商品化の後の2016年には、グッドデザイン賞も受賞し、多くのメディアに掲載されました。

wallpaper MONOCLE グッドデザイン賞

順風満帆なスタートだったのでしょうか?

ミラノで評価され、メディアでも取り上げられたこともあって、その後、問い合わせや引き合いは多々ありました。

でも、現実には量産化のハードルが非常に高く、商品化できないままに2~3年の月日が流れてしまったんです。金型製作だけでかなりのコストがかかるということもだんだんとわかっていきました。

解決策として選んだ方法は?

そこでチャレンジしたのが、現在は広く知られるようになった「クラウドファンディング」。

当時は、まだクラウドファンディングという名前自体、日本に浸透していない状況でしたが、「SWING BINには世界にたくさんのファンがいるから、資金を集められるはず」と信じて、2014年に世界最大のクラウドファンディングサイト『Kickstarter』でプロジェクトに挑戦することにしました。

目標金額の設定はいくらだったんでしょう?

65,000 USドルです。ちなみに、当時のKickstarterではガジェット系電子機器やアニメなどがプロジェクトのメインだったので、インテリア商品は異色でした。

でも、たくさんの方々から支持をいただき、見事に目標を達成して77,377USドル(約830万円)の資金を欧米を中心に571人の支援者から得ることができました。これはその当時のKickstarterインテリア部門史上2位の資金獲得という記録になりました。

資金は十分確保できたということでしょうか?

SWING BINの最大の特徴である非常にミニマルなデザインが支持され、多くの方から資金を集められたんですが、結局、フタを開けてみれば開発には1,000万円ほどのコストがかかりました…。

「今までに見たことのない美しいゴミ箱」に必要だったのは、美しいデザインだけではなく、詳細にわたる緻密な計算、度重なる試作と失敗、そして何より理想のデザインを実現する技術でした。こだわりをプロダクトに落とし込むには、高い技術力のあるメーカーでも大変難しくて、量産に至る過程で数多くのトラブルや修正が生じたんです。

それでもあきらめなかったわけですね?

多くの試作と失敗、修正をかさね、頓挫しそうになった事もありましたが、株式会社プラスティックス(※)とともに、数々の難題を解決していきました。

外観の完全な円筒形(地面に垂直なライン)を保つため、「割型」を使用して成型しています。高い技術を持つ国内のメーカーで金型を製作し、両サイドに生じるパーティングラインを極限まで目立たなくすることで、美しさとスムーズな手触りを実現しました。また、開口部の小口の厚みを一定にするために、内部の壁は複雑な曲面になっているんです。

図面

※株式会社プラスティックス:福井県福井市の樹脂加工メーカーで、MOHEIMの事業会社。アクリルや塩ビ等の樹脂素材をメインに、金属や木材など様々な材料を用いた製品の製造販売を行う。

素材についても紆余曲折があったのでしょうか。

ゴミ箱でよく使われる素材の一つはスチールだと思います。

ただ、薄いスチールを使用して製造することになりますから、使っているうちに凹みや傷がどうしても目立つようになります。また、表面に接合部分の重なりが現れるところ…。「これは美しくない…」と。そこで、理想のデザインを実現し、かつ最も実用的な素材を…、つまり、プラスチックのなかでも高級感と強度をあわせ持つABS樹脂を採用しました。

マットなテクスチャを表現するために、表面にはシボ(微細な凹凸)を打ってツヤを消し、さらにツヤ消しのウレタン塗装をすることによって落ち着いた上質な質感に仕上げました。

プロトタイプ

ほかにも開発途中で追加した機能はありましたか?

Kickstarterのプロジェクト支援者から「内部にゴミ袋を取り付けられないのは実用的ではない」という指摘があり、プロジェクト実施中に改善しました。

解決策は非常にシンプル。内部にロールしたPVCシートを沿わせることで、外観の美しさを損ねることなく、ユーザーのニーズに対応することができました。これは袋を必要としない方はもちろん取り外して使えます。

袋止めのPETシート

ところで、そもそもなぜ「ゴミ箱」というアイテムをデザインしようと思ったんでしょうか。

ゴミ箱は使う頻度の高いアイテムなので、意外と目につくところに置くことになります。また、私自身もそうですが、中に入っているゴミを、自宅やオフィスに招いた人には見せたくないので、フタ付きのものを選ぶ方も多いと思います。

ただ、市販されているフタ付きの物は、いかにも「ゴミ箱」というデザインがほとんどだったので、美しい佇まいのものが欲しい、と思ったことがきっかけです。

SWING BINは、「ゴミ箱」というよりシンプルでミニマルな「オブジェ」として見てもらえたら、と思っています。インテリアに馴染む美しいオブジェ…そのオブジェが、ゴミ箱としての機能も持ち合わせている…という感じでしょうか。

ゴミ箱はあまり目立たないところに置かなきゃ…というふうに考えていた人には特に、SWING BINの存在を知ってほしいですし、実際に使ってほしいですね。そして、SWING BINを置くことによって、より美しく、理想の空間へ変えていただきたいと思っています。

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