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BRICK STAND

丸みを帯びた直方体に5つの穴を配しただけの、潔ささえ感じるシンプルな傘立て。フィンランドの穴あき煉瓦からインスピレーションを得たデザインです。サステナビリティにも重点を置き、リサイクル素材の開発にも時間を費やしました。

さまざまな試行錯誤から生まれた BRICK STANDに込められた想いとはなにか。
デザイナーの熊野亘氏に聞きました。
BRICK STAND

 

最小限のボリュームで、気軽に使える傘立て

フィンランドの穴あき煉瓦からインスピレーションを得てデザインされたシンプルな佇まいと素朴な素材感が特徴のBRICK STAND。

玄関先やポーチでドアストッパーとしても使えます。原材料にはリサイクル素材を70%使用。サステナビリティにも配慮しました。

 


PRODUCT STORY Vol.9

—— BRICK STANDのデザインを思いついたきっかけを教えてください。

日本で傘立てが使われているシチュエーションに、ちょっと疑問を感じていたんです。結構玄関が狭いのに大げさなものが使われているなぁ…と。「こんなに狭い玄関で、こんな大げさな傘立てが使われてていいのか? もうちょっと小さいものでもいいんじゃないのか」って思いがあって、ずっとコンパクトな傘立てというものを頭の中では考えていたんです。
そんななか、フィンランドにいったときに、日本の規格とは違う穴のあいた煉瓦のブロックを見かけて、その瞬間に「あ! 傘立てってこれでいいんじゃないのかな」って思いました。

STORIES BRICK STAND

—— フィンランドでインスピレーションを得たのですね。そしてMOHEIMのプロダクトに落とし込んだ。

自分が「こうやりたい」とか「こうしたい」というより、「これでいいんじゃない」っていう。そういう感覚のプロダクトができるんじゃないのかな、と、穴あき煉瓦を見たときに感じました。

お声がけをいただいて、簡素ながら気軽に玄関先でつかえるプロダクトを作れないか…という思いで取り組み始めたこのプロジェクト。MOHEIMのプロダクトとして「コンパクトな傘立て」が、ブランドコンセプトとすごく合うんじゃないのかなと思って、提案させていただいたんです。

STORIES BRICK STAND

—— 傘立てとして使うだけではなく、他の用途としても使えることも想定してデザインされたのでしょうか。

そうですね。いろんな用途に使ってほしいと思っています。傘立ては基本的に玄関先で使うものですから、まずドアストッパーとしてすぐ使えますよね。あと、重さを考えると(約2kg)漬物石なんかにすることもできます(笑)。

傘立て以外にも用途があるということは、よく動かすことになりますが、陶器のプロダクトなので、どうしても欠けたり割れたりするリスクがあります。そのリスクを抑えるために、角の面取りをしました。

そうすることで、やわらかな印象をまとって、結構フレンドリーな装いになりましたね。機能とフォルムがうまくマッチしているものになっていると思います。

STORIES BRICK STAND

—— さらに、かなりこだわったのが素材だったのではないでしょうか。

これからの時代、僕たちデザイナーがプロダクトを作っていくときに、第一に考えなければいけないことは、素材のことだと思っているんです。

普通の素材…例えば、煉瓦やブロックというもので傘立てをただ作るというだけではなくて、素材から開発して新しい試みができれば…とずっと思い描いていました。

今回、BRICK STANDの開発と製造協力をしてくださることになった、多治見のメーカーを訪問したときに、「こういう素材をいま開発中です」と見せてもらったものが、廃材を使った素材でした。

多治見という地域のなかで、陶磁器などから出てきた廃材であったり、その地域の鉱山から出た廃棄物だったり。また、豊田が近隣地域になることもあり、トヨタの製造過程で出るスラグだったり…そういった、本来捨てられるはずのものをバージン材と混ぜて素材開発をしていこうと決めました。

STORIES BRICK STAND

—— 開発をスタートしてから、納得がいくものができるまでかなりの時間がかかりましたね。

そうですね、長い年月でしたよね。丸2年以上かかりました。

「リサイクル素材を20%使っています」と言っても説得力がないので、なるべくリサイクル素材使用率のパーセンテージを上げたもので、かつ、製品としてきちんと安定感があるものを生み出すことが必要でした。何度も試行錯誤を重ねた結果、リサイクル素材を70%使用した素材の開発ができました。

BRICK STAND colors

—— BRICK STANDのカラー展開についても教えてください。

ただ作った白いものに色を塗るというのではなく、素材の色をきちんと出していけたらいいな…という思いがありました。

リサイクル素材を開発していくなかで、素材の配合によって、赤系・黒系・白系と色の違いを出せるということが研究をしていくなかでわかってきたんです。

焼きあがってできたものに色を塗るというのではなく、リサイクル素材の配合で、色の表現をしていこう。素材本来の色をそのままカラー展開に使うことにしました。

リサイクル素材をきちんと配合することでできたのが「brick red」「ash black」「stone white」の3色です。

—— リサイクル素材を使うことで、ほかにも発見はありましたか?

リサイクル素材を使うことで、焼きあがって完成したものは、色や柄に個体差が出てきます。でも僕はあえて「素材の違い」みたいなものが出てきたらいいなと思っているんです。

クオリティの担保がきちんとなければいけないのは当然ですが、個体差があることで、逆に唯一無二というプラスの価値になる時代になってきていると思います。

—— 一つひとつ違っているからこそ愛おしい…というような感じですね。

そうですね。そもそも出る個体差と、リサイクル材であるがゆえに焼成すると出てくる色ムラなどが、うまく交わったときにいいプロダクトができると感じています。

色や柄など個体差があることは、マイナスにとらえられがちです。でも、マイナスの要素もプラスにとらえていくようなプロダクトになっていったらいいなと考えています。

振り返ってみると、デザインのひらめきから、素材開発、量産できるようになるまでにいろんなパズルがありましたね。そして、長い年月をかけてピースの一つひとつがしっかりと噛み合うことで、ついにこのBRICK STANDが完成しました。

—— そんなストーリーも知っていただいて、多くの人に愛されるプロダクトになってほしいと思います。

 

MOHEIM BRICK STAND Movie