GRAIN
その名前の由来となった、青や茶、黒など、表面に現れるたくさんの「つぶつぶ」が白の生地に個性的な表情とあたたかみのある色味を与えます。
美濃焼のうつわを粗く砕いて土に混ぜたリサイクル土を素材に使用し、無釉薬のテクスチャや、職人の手仕事で作り出されるやさしい曲線が魅力のこのうつわがどのように生まれたのかを語るSTORIES。
製造する晋山窯ヤマツ株式会社の代表・土本正芳氏と、MOHEIMクリエイティブ・ディレクター竹内茂一郎が対談しました。
土本来のラフな質感、表面に現れる素材の粒感、一つひとつ異なる豊かな表情と手触りを楽しむうつわGRAIN。
表面に散りばめられたように現れる無数の「粒」が名前の由来。
手にすると、職人の手仕事が作り出すやさしい曲線のフォルムとともに、しっくりと手に馴染みます。
独特の土の風合いと粒の凹凸で、ぬくもりと心地よさを感じられるテクスチャは、使われなくなった美濃焼のうつわを、粗く砕いて土に混ぜたリサイクル土を使うことで生まれました。
PRODUCT STORY Vol.18
—— GRAINの開発のきっかけについて教えてください。
竹内
もともとは、数年前にSTONEWAREの規格外品を使ってリサイクル素材を開発し、商品を作ることができないか…と模索していたことがあったんです。その可能性を探るべく、美濃焼の産地である東濃地方で長く商品製造・開発をしている、晋山窯ヤマツさんと相談しながら、開発を進めることになりました。
リサイクル法などのルールが理由で、STONEWAREを使った素材の開発については実現に至っていませんが「あるものを使って、できることから始めよう」という思いで、使われなくなった美濃焼をリサイクルして作られた素材を使ったうつわを作ることにしました。
—— 晋山窯ヤマツさんは、長い歴史を持つ美濃焼の窯元なんですね。
土本
美濃焼の産地として知られる東濃地域(岐阜県多治見市・土岐市・瑞浪市)では、焼き物文化が7世紀ごろから1400年もの年月を超えて息づいています。私たちの晋山窯ヤマツは、創業から160年近い歴史を持っています。創業年については、実は先代が明治元年(1868年)と定めたのですが、その前から共同窯を使って焼き物づくりをしていたようですので、実際の歴史はそれより長いと思います。

煎茶湯呑みが主力の製品で、最盛期にはOEMの商品を2500〜3000個を1日で作ることもありました。
バブルが弾けて、窯を存続させるのかどうかを模索した時期もありましたが、15年ほど前に組合のマッチング事業でデザイナーとの協働を始めることに。そこから自社ブランドの商品開発もスタートさせ、現在に至ります。


—— GRAINにも使われているリサイクル土についてもストーリーがあると伺いました。
土本
美濃地方ではリサイクル土が20年ほど前に開発されました。
この地域で1400年もの間焼き物が作られているのは、良質な陶土と、焼成に必要な薪となる木材に恵まれているからなんですね。ただ、美濃の山から採れる土が枯渇してしまう可能性があるという話が出て「豊富な土に甘えていてはいけないのではないか」という問いから開発を進めたという経緯があります。
新規の鉱山をひらくということは環境アセスメントなどの関係で難しいですし、美濃で良質な土が採れるということは奇跡的なこと、ということも多くの方に知ってほしい、という想いもリサイクル土には込められています。
竹内
美濃のリサイクル土は、このエリアの家庭や工場で不要になった使用済みの食器や製造工程で出た規格外品の陶磁器を細かく砕いて、新しい粘土に混ぜ込んで再び作られた陶土です。リサイクル土を使うことで、新たに掘り出す粘土の消費量を抑えられます。
そして、一度高温で焼き固めた陶磁器は、害はないのですが自然分解せず土には戻りません。廃棄される陶磁器は埋め立て処分されるのですが、これを再び原料にすることでゴミの削減にもつながります。

—— GRAINに使われているリサイクル土は、よく使われるものとは少し違うと聞きました。
土本
一般的なリサイクル土は陶磁器を20μ(ミクロン)程度まで粉砕して作ります。かなり細かく砕くので、表面に粒が見えることはありません。でも、GRAINに使うリサイクル土は、土鍋やガラス質の陶磁器は除いた上で、あえて粗く0.5mm以下という大きさに粉砕して混ぜています。そうすることで、リサイクルされた焼き物が表面に粒となって現れ、独特の質感と風合いになります。
竹内
実際に製造の現場を見学させてもらったときに驚いたのは、焼成する前の土は砕かれた素材の粒が全く見えないんです。焼くことでその粒が見えてくる。どんな粒が出てくるのかは「焼いてみないとわからない」というところもGRAINの持つ個性であり、面白い点だと感じました。

土本
ちなみに、黒や青、茶系の粒が表面に現れていますが、これはもともとの焼き物の釉薬層が色となって出てきたものです。でも、リサイクル土の素材で考えると、その釉薬層は10%にも満たないんです。発色が強いから目立つんでしょうね。
竹内
リサイクル土の使用割合などを考えると、粒感が目立たなくなるんじゃないか…と思うんですが、表面に散りばめられたように現れて、GRAINならではの表情を生み出しています。

—— このリサイクル土を使ったGRAINの製造方法はどういったものでしょうか。
土本
0.3mm以下に粉砕したものを混ぜ込むリサイクル土だと動力成形ができるんですが、GRAINに使っているリサイクル土については「水ごて成形」という古い製法で作ることになります。
竹内
水ごて成形という技法では、回転する石膏型に粘土を入れ「水ごて」と呼ばれる金属製の型(コテ)を押し当てて形を整えるんですね。機械と型を使うのですが誰でもできるわけではなく、型に入れる土の量や、水の量とコテを押し当てる加減など、職人の技術が必要とされる成形方法だと知りました。

土本
GRAINをこの成形方法で作る理由として、美濃焼のなかでも自慢したい職人技も見てほしいという意図があります。熟練の技を持った職人が一つひとつの商品を生み出しているということの価値を知ってほしいですね。産地や素材だけでなく、こういった伝統的な製法・技法にもスポットライトを当て、後継者を育てて技術を継承していくことも重要だと思っています。
竹内
ファーストロットを量産していただく際、初期に作っていただいたサンプルとは違うものになるのでは…と思っていましたが、水ごて職人さんの技術がとても高く、サンプルとほぼ同じものを生み出してくれました。ただ、良い意味で、手作りならではの「ゆらぎ」や「個性」がそれぞれ出てくることも、GRAINを味わい深いうつわに仕立てている要素の一つだと思っています。
—— 開発と製造で苦労した点などはありましたか?
竹内
GRAINは、内側は汚れやステインなどを抑えるため、クリアの釉薬で仕上げていますが、手が触れる外側は無釉薬で仕上げることにこだわりました。一番の特徴である粒の素材感と土本来のラフな質感をそのまま肌で感じてほしいと思ったからです。
土本
これまで、リサイクル土を使った食器については釉薬で仕上げるものしか作っていませんでした。GRAINは外側は釉薬を使わずに仕上げるということで、はじめての経験から苦労した点もあります。特に、MUGの持ち手部分は、付け根部分のラインをなだらかにするために少し土を盛るのですが、そのつなぎ目の部分に少しラインが入ってしまうんですね。そこで、水ごて屋さんで成形してもらったものを、我々の窯で一次焼成した後、その土を盛った部分にやすりがけを施すことにしました。このひと手間をかけてから、本焼成をしています。
竹内
MUGの持ち手ひとつにしても、やはり職人さんの技なしでは成り立たないんだな…と話を伺って再認識しています。

—— 最後に、GRAINの魅力についてお話しいただけますか?
土本
MOHEIMで人気のSTONEWAREと比べると、GRAINは全然違った印象のうつわに仕上がっています。デザインの図面を上げるところから竹内さんとは相談しながら進めていきましたが、素材が持つ雰囲気をこのGRAINのフォルムに落とし込んだんだなと納得しました。この土で装飾があるものや、華やかなデザインのうつわを作ると印象が全然違う…というか、土の雰囲気にデコラティブな印象が合わないと思うんです。GRAINシリーズのうつわたちは、見た目がなんともやわらかで、どこか「かわいらしさ」も感じます。結論として「このリサイクル土に、このデザインあり」と思いました。
竹内
やわらかでやさしい曲線のフォルムを意識してデザインしました。手に持ったときの収まりのよさや、ぽってりとした丸みがぬくもりを演出するように、と考えたからです。
水ごて成形の職人さん、そして、晋山窯ヤマツの土本さんをはじめとする職人さんたちのおかげで、素敵なアイテムに仕上げることができました。使うほどに素材の風合いや手触りを味わって、日々手に取りたくなるうつわになったと思います。
毎日の暮らしに寄り添う食器として、大切な人へのプレゼントとしてもおすすめしたいGRAINシリーズです。
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