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SHOEHORN

凛とした直線とやわらかな曲線が調和したSHOEHORNは、その佇まいも美しい靴べら。
軽くて柔らかにしなりつつ、強靭性と耐衝撃性を兼ね備えたバルカナイズドファイバーを素材に使用することで、そのデザイン性もさることながら、靴を履くときの秀逸な使い心地も実現させました。
デザイナー・竹内茂一郎が語る、その開発のストーリー。
SHOEHORN

 

使い心地抜群の靴べらは その佇まいまで美しい

凛とした雰囲気をまとったSHOEHORNはデザイン性だけでなく、靴を履くときの使い心地もしっかり考えて作られた靴べら。
コットンや木材パルプを原材料とするバルカナイズドファイバーを素材に使用し、そのしなりとあたたかみは、使いやすさと美しさを際立たせています。

 


PRODUCT STORY Vol.10

—— この靴べらを開発するきっかけや経緯を教えてください。

はじまりは、とあるクライアントさんからの要望でした。訪問した際に「どんなアイテムがあると嬉しいですか?」と尋ねたときの答えが「靴べら」だったんです。「木製は落とすと欠けたり、力を入れると割れたりする。金属製は、重くて冷たく、硬い。プラスチック製は安っぽい。これらとは違う素材のデザイン性の高い、キレイな靴べらが欲しい」と言われました。

SHOEHORN white

私自身、出張先でホテルに泊まったりすることもよくありますが、だいたいは味気ない木製や金属製の靴べらしか見かけることはありません。個人の自宅で見かけるのも、平凡なプラスティック製のものがほとんどじゃないでしょうか。デザインの美しさが目に留まるような靴べらがないわけではないのですが、広く出回っていないな…と私も思いました。

—— かつ、この靴べらがほかの一般的なものと違うのは、素材ではないでしょうか。

おっしゃるとおりです。靴べらを差し込む土台のベースはコンクリートなのですが、靴べら本体は「バルカナイズドファイバー」という素材を採用しました。この素材との出会いも、SHOEHORNを開発する大きなきっかけとなりました。

SHOEHORN base

—— バルカナイズドファイバー…って、あまり聞きなれない素材のように思います。

でも、バルカナイズドファイバーは特に新しい素材というわけではなく、その歴史は結構古いんです。コットンパルプや木材パルプを原料として作られる素材で、そもそも19世紀半ばごろにイギリスで発明されました。工業用部品の素材としてアメリカで発展したそうです。歴史としてはプラスチックよりも前に誕生しているみたいですね。

そんなバルカナイズドファイバー。実は、私たちの身の回りというか、目に見えるところでも結構使われているんです。例えば、スーツケースやメイクボックスはわかりやすい例ですね。ほかにも、剣道の胴着の素材や、食品用ラップの刃の部分に使われていたりもします。意外かもしれませんが、結構身近でしょう?

—— 全然気に留めることはありませんでしたが、ラップの箱についている白い刃がバルカナイズドファイバーだったんですね。もう少し、この素材のことについて聞かせてもらえますか?

バルカナイズドファイバーは「世界一堅い紙」とも呼ばれているんです。強靭性に優れていて、成型ができるのでしなやかな「しなり」が実現できるんです。耐衝撃性も高いのに軽い素材でもある…。

これは靴べらにはぴったりの素材だと思いました。木よりも堅牢で割れる心配はない。さらに、スチールよりも断然軽い。メリットが多いですよね。

SHOEHORN white

—— 一石二鳥どころか、たくさんの利点を兼ね備えた素材なんですね。

靴べらの素材としてうってつけであるというだけでなく、サステナビリティの観点からもバルカナイズドファイバーは優秀です。

コットンパルプや木材パルプを使った素材ということは、生分解性で地球環境にやさしい材料です。つまり、土に還るんですね。いまの時流にぴったりの自然派素材だから、新しいのかと思ったら、150年以上前に開発されていたというのも面白いですね。

—— 素材の特性を十分に活かしたところを、より具体的に教えてください。

先に、成型ができるので、しなやかな「しなり」が実現できるということを少し話しました。この特性がSHOEHORNにとっては一番重要かもしれません。

木や金属にはない「しなり」がバルカナイズドファイバーでは実現できます。靴べらは、靴を楽に履く助けとなるツールですから、使いやすさ、つまり、靴の履きやすさを高めることが大切ですよね。このときに「しなり」が大きな役割を果たします。実際に使ってもらうとわかるのですが、SHOEHORNを使うと、本当にスムーズにかかとを靴に収めることができるんです。

SHOEHORN usage

—— この薄さとしなりが相まって、ほかの靴べらよりもストレスなく靴を履くことができますね。

あと、この曲面にもこだわっています。実は、一本一本職人さんが手作業で曲げてくれているんです。直線的でありながら、かかとに沿うように曲げられた曲面が持ち手の部分まで続いているのが、なんとも柔らかな表情でしょう。そして、持ち手部分に至る部分の角度や重なりにも妥協しませんでした。その分、職人さんにはご苦労をおかけしてしまったかもしれませんね…(苦笑)。

SHOEHORN handle

—— 確かにこの靴べら本体のラインは秀逸ですね。とても有機的な印象も受けます。

有機的といえば、バルカナイズドファイバーのテクスチャも実際に触って感じてほしいです。この素材自体が持つ肌ざわりが私自身とても気に入っていて…触れた時にやさしいあたたかみが感じられるのもこの素材の長所ですね。

SHOEHORN black handle

—— 話を聞いて、SHOEHORNの魅力はデザインだけじゃない、ということがよくわかりました。特筆すべき点が満載の靴べらですね。

デザインの美しさは見た目でもわかっていただけると思うのですが、写真ではなかなか伝わらない…というか、伝えられないメリットが多い靴べらだと思います。ぜひ、実際に触って、使って、その機能性や素材感を体感してほしいです。靴べらを毎日のように使う人には特に、MOHEIMのSHOEHORNをおすすめします。